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どこで清酒を考えるのか。 [清酒の面白み]

お酒というものが、お互いに知らない人間同士が知り合うための役割を担わされていた。

下戸の私には、よくわからない(笑)ことですが
社会にそのような役割を持っているのがお酒である、と、柳田國男氏の著作に書かれています。

そして人類は、これに変わるものを開発してこなかったとも。

なるほどと唸らされます。



米の酒について、元々は、神様にお供えするものと人間が同じ物を飲み、同じく酔うことができる代物であったものから行事に使われ始め、多人数と酔うことで一体感を得ることが目的であった、大勢で飲んでいた時代は、色のてりや味わいを気にすることがなかったと。
独酌の道具が普及したことで、色のてりや味わいを気にするようになり、それが今の(大正時代)清酒の技術の進歩につながっている、と評した文章があります。

この見方は、個人主義と封建的な社会とのバランスの問題でありましょうし、柳田國男氏や文化人がこだわっていく民俗学にもつながっていくのでしょう。

ここはシンプルに、明治維新以降、産業資本主義経済社会のシステムが導入され、それまでの封建的な社会システムを排除し、資本主義経済のシステムに都合の良いものは残しつつ、西欧化が図られていた時代であると見ていきます。
資本主義経済システムにおいては、封建的な制度の多くは資本の運動の効率を阻害するものであるので、排除することが基本になります。特に労働者を確保するためには、家制度に縛られた封建的なシステムよりも、自由に労働者を得ることができるシステムを欲求します。そのシステムの確立のための一つの方便が、個人主義、でありましょう。

その個人主義のシステムが導入されていたと取れる、酒と社会と人の関係性の指摘に深く唸ってしまいます。

独酌は、個人主義であると。

そう考えてみるとお酒の席というものは、時代を下るにつれて、商品経済が発達するにつれて?個人主義化していくものであるとも考えられます。しかし一人で飲む酒に、社会で与えられる役割というものは、前記のものではないでしょう。となると、暗い酒のイメージというのは、一人で酒を飲んでいることが付随するのではないか。大勢で飲む酒と、一人で飲む酒。この印象の対比が、明と暗に分けられたことが、暗いイメージの元ではなかろうか、などと妄想をします。

この個人主義が、酒の色のてりと味わいを進化させたと柳田國男氏は言います。

その進化した酒というものはどういうものであったのか、それは昭和四十年代に世間に見つけられる吟醸酒の先駆けではなかったのか。

60年代というものが、自由とは個人の解放、だと考える節があったようですが半世紀以上経った現在、その思想は社会にどのような利益をもたらしたかと、考えてしまいます。

個人の解放が求められたのは、思想上の進歩ゆえにではなく、資本主義経済社会のシステムを既存の社会に「効率よく」普及させるがための一つの手段であったのでしょう。それは60年代に始まったことではなく、日本だけで考えれば、明治維新における社会構造の変更以降、封建的な社会システムから資本主義経済社会のシステムへと社会のあらゆる面での置換が始まっていたことです。

酒と社会との関係性が見えると、確かに人類は酒を媒介にしたコミュニケーション技術に頼りきっているんだなと気がつく事ができます。

コロナ禍における「アルコール」というものが、「異郷の者同士を短時間に理解を深めるため」のツールとしての役割から遠ざけられ、個人主義、むしろ個人で楽しめる酒としての役割に強烈にスポットライトが当てられましたが、個人主義が狭められていると感じるような知識人や文化人の方のその狭められている感覚は、自由に人と飲み食いができない事がどれほどの割合を占めているのだろうかと。

東京在住の芸能人が飲食を止められないというのは「異郷の者同士を繋げる」ツールとしてのお酒の役割、お酒のある場の役割を彼らの生き馬の目を抜く社会において、封建的なツールの役割を無意識に痛感しているのではないかと私は想像をします。

「特効薬のない風邪」で、1日に50人も60人も人が亡くなっていくのを、たかが「風邪」といつまで言えるのか。

コロナ禍以降、社会はどのように変遷をするのか、以前に私は、社会の下部構造である資本主義経済のシステムが変更するわけでもないから変わらないと書きました。
お酒という面からコロナ禍以降を考えれば、今まで以上に「異郷の者同士を繋げる」「同郷の者同士の結びつきを強める」ツールとしての役割を人々が「無意識に」強く持っていくのだろうと。
それは個人主義的な酒質ではなく、人と人との会話を助けるような役割を担うことが、キーワードではないかと妄想をします。それは単体としての役割もそうでありますし、お酒と欠かせない食事との関係性にも繋がってくるはずです。

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