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コクとは何か [雑感]

旨味のことを言うのであろう「コク」を広辞苑で調べてみます。

こく 【酷】① (本来、中国で穀物の熟成したことを表したことから)酒などの深みのある濃い味わい。

「こく」の漢字は、「酷」の字を当てています。
部首は、ひよみのとり、とりへん、さけのとり、とありますので、
酒に関することであろうと想像ができます。なるほど。





飲みやすく、口に入れた瞬間に、「うんまっ」と言いたくなるような清酒があります。

その清酒の特徴を観察していると、まず最初に甘味、次に甘味に乗った旨味、微かに酸味。
冷えすぎていたり、開栓して冷蔵庫に入れておいたりしたものには、苦味を最後に感じます。

最後の苦味というのは、開栓してからの冷蔵庫保管における経過時間、
というものに付帯しているような気もします。
そういうものも常温に戻してみると、最後の苦味が感じにくくなっているものもあったりします。
苦味がどのタイミングででるのかも、その蔵の設計にもよることでしょう。

そして、このわかりやすく「旨い」と言える飲み味はなんなのかと、
モノの本を読んでいるとそれは、「母乳」の味わいであると。
その「母乳」的な味わいに酸味を加えると、飲み飽きない味の設計になる。

向田邦子氏の随筆の中で、小学生の頃に父親の来訪する客に供する自家製の米の酒を作るときにおいて、
わざと失敗作を作ってアルコールを産ませず、子供の自分たちが美味しい濁酒のなりそこないを作っていたとありました。

甘味と旨味を作り出すための、製造コストの低下のための「江戸時代の造り」の選択であることも
頭の片隅に入れていても良いかもしれません。
精米歩合も9割ほどにしないと、米の旨味、油脂分も引き出すことが難しいかと。
歩留まりというか、製造期間の長さは、精米歩合を少なくすることで材料費から帳尻を取れるのかもしれないと私は意地悪く考えてしまいます。実際は分かりませんが、考え方としては筋があります。

恣意的な「辛口」ブームを業界は準備していたはずですが、このコロナ禍による
飲食業界の大不況において、思うような展開に持っていくことができるのかを注目しています。

この「辛口」の選定も製造コスト低減につながるとしていたら、
このブームは迎えない方が良いかもしれませんが、流行を作り出せると考えている人たちは、
白を黒にするそのプロセスにお金が動くことだけを目的とするはずですので、
「辛口」であろうが「甘口」であろうがどちらでも良いのかもしれません。

私は「甘口」という表現よりも「非辛口」と、考えるようにしています。
実際甘いのは、甘口の表現でわかりますが、そうでないのも「甘口」というのは
単純に、辛口の酒質がデフォルトであった世代の酒に対するアンチテーゼでしかないのでは?
と、考えるからです。
そして「辛口」と表現されてきたものも、三倍増醸酒の「甘口」に対するアンチテーゼだと考えると、
「辛口」とカテゴライズされている清酒にしても、正確な表現だろうかと考えてしまいます。
ここら辺は、清酒の酒質の歴史を江戸後期辺りから遡ると・・・別のお話になりますね。

さて、その流れとともに、「母乳」的な味わいのする特徴を持った清酒をメインに据える。
もしくは、この「母乳」的な味わいのものをアンチテーゼにした「辛口」というものが
メインに据えられているのかもしれません。

欧州向けの輸出に関しては、清酒のアルコール度数の低下は、ビジネス倫理的に避けて通れないものになるでしょうし、かけ間違えたボタンの輸出用清酒の味設計を保全するために投資をした冷蔵設備も、無駄にならないかもしれません。

低アルコール化をしながらも、清酒の甘味と旨味と油脂分、そして酸味を持たせる味設計について、
生酛づくりというものがコストと付与価値において適した製法であると、
そのように考えている、ような気がします。
木桶の使用による木の香りの添加も、
後味のスッキリさを演出するためにも必要なものであると推測します。
なるほど、伝統的製造手法が必要な環境を想定しつつ段取りをしていると考えれば、
業界の一部がそのような動きをするのも(彼らなりの)理にかなっています。

私としては単純にアングロサクソンが、「酷のない」味のするアルコールを好むのか、と考えていますので、当該地域では「熟成しうる酒質」が向いているのであろうとは想像をしています。

その先に、役割を持った清酒、というものの存在意義があるのだろうと。

となると私は身の丈に合わない、ずいぶんと立派な解答を頂いていることになります。

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