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倫理からの逆襲 [雑感]

自動車の自動運転というものが、徐々に現実化してくるものとなってきました。

自動運転というべきか、AIによる運転と読んだ方が正確でありましょう。


宗教改革者 佐藤優 角川新書 を読んでいると、AIについての記述があります。

自動車の自動運転が普及し、世の中の自動車事故による死亡事故が現在の半数になったときに
人間が自動車を運転することができるのは、F1のような特殊な場所に限られることになるだろうと。
と、同時に、AIで運転する際に、サイバー攻撃で1年間に数回、トラックが暴走をして50人ほどが犠牲になるとき、サイバー攻撃によるAIの弱点と、人間の運転のみによる被害者の数と、定量的なデータで出てくるものと、人間の受け止め方が異なるであろうと、2017年の段階で述べられています。

これは、現在のCOVID19の報道における課題と密接にリンクしているものであろうと私は思います。

感染というものに対して科学的な数値ではない、
人間の受け止め方に課題があるのは、TVメディアなどの報道の方針を観察していれば理解できます。

そして佐藤優氏は、次のように述べます。

AIが進んでくると、われわれはものすごくプリミティブ(原初的)な倫理の復讐を受けることになるでしょう。 同著 P,78

それは自動車事故における回避する先の判断であると。

確実にぶつかるということであれば、そういう場合にハンドルを右に切るか左に切るかということをプログラミングしておかなければいけなくなります。 同著 P,79

これを保険会社に考えさせたら、補償金が少ないほうに決まっていると、確実に偏差値の低いほうが轢かれてしまいます。そうすると、偏差値の高い・低いが命の値段にもかかわってくることになってしまいます。 同著 P,80

自動運転の課題を、政治、産業、経済、技術的な観点から自動車評論家の方々はされています。

これが令和の時代の倫理の問題であるかといえば、戦後の昭和の時代に、小林秀雄氏がすでに随筆で取り上げています。将棋指しの人工知能は人間に勝るのか。小林秀雄氏はこれに対して倫理的な答えを、人間の、常識をする、という一言に集約して語っています。

佐藤優氏の観察の通り、
自動車の自動運転、AIによる運転ができる車両を購入する際に購入者は、
Dラーで求められるかもしれません。
事故を回避する際の判断基準をプログラミングしなければなりません。
それはどのようになさいますか、と。

解決できない倫理の問題でありますので、ドラマや小説の題材にされるでしょう。

例えば、保険会社の推奨するパターンの一つに、偏差値の高いと判断できる側の安全を優先すると。
それは、服装、学生服であるならばその学生服の学校の偏差値、もしかしたら居住地域や
国籍などもチェック項目にのぼるやもしれません。年齢、体格、その他の判断基準がAIには
インプットされており、緊急事態に際しては人間の咄嗟の判断よりも早く、
全ての情報を引き出してプログラム通りの判断をする。
そしてその中には、運転者を犠牲にするという判断も含まれている。
緊急回避に際して、周囲の人間よりも運転手の偏差値が低ければ、
運転手を犠牲にする判断をAIは行う。
それは保険会社の支払う補償額が少ないことが最優先されるプログラムだった、などといった、
星新一のショートショートのような話は、現実的になります。

このような解決できそうにもない倫理的な課題に対して、
来るべき将来にどのような態度を取るのか。

実はこの倫理的な課題に対して、AIが運転する自動車を個人の所有物にしない、ということで
倫理を大きく減衰させるように見せかけることもできましょう。

現状の全自動運転車として存在しているタクシーの運転手に、
事故をするときは客の自分が助かるためなら、
どのようなことでもするようにと言うことができるのは、
相当な顔の面の厚さがあることを予想させます。

無論、ほとんどの人がタクシーの運転手の方の「常識」に、何も言わずに任せざるを得ないはずです。
このことから考えて、
自動車メーカーと国と保険会社が、判断基準を決めておくやり方が思いつきます。
課題が解決できるわけではありませんが、偏差値とその時の補償額の高い低いで
何を優先するかをAIが判断をする。
それは、前述した通り、自動車外の誰を犠牲にするのかともしくは
自動車内の人間を犠牲にするのか。
こういったところにも、評価経済が入る余地が見えてきます。

司馬遼太郎氏とドナルド・キーン氏の対談において、最近の人は江戸時代を礼賛する人が多いが
そのような話をしている人たちは、自分が生まれ変わったら武士になれるものだと思っている人だと、
決して、農民に生まれ変わる心配をしていないと。

誰もがAIに、轢かれても良い側の人間だと判断されていないと思いたがります。

デジタル技術への移行で、個人データが常に発信し続けられるような状態になり
AIがその信号を受け取ると、個人データで年齢、職業、収入、SNSの登録者数といいねの数(笑)を
常に把握して、轢いても良い人間を選び続けることもできるでしょう。
さらには、お金持ちのオプションとして、AIから常に優遇される判断を与えられるようなデータを追加することができるようにもなるとは、私が保険会社ならばそのようにもします(毒)

アフターコロナがどうだこうだといわれますが、解決しにくい倫理的課題を棚上げにしていくのは
コロナ禍前と後と変化があるのでしょうか。

人間が判断をするよりもプログラムが判断した方が人間の自尊心を傷つけないとは、
どこぞのSFのセリフだそうです。

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