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古代窯と産業 2 [雑感]

日本における仏教の始まりを見る視点について、聖徳太子を指摘する考えもあるようです。

なるほどと、そうだったのかとも思います。




この講座で配られたレジュメには、古墳時代の産業革命、と銘打たれています。
その方が私には、理解しやすい解説の切り口でした。

歴史的に、日本に陶磁器の技術がもたらされたのは6世紀前後。

朝鮮半島からの技術の流入でありました。
その当時の朝鮮半島の政治的情勢を見れば、中国大陸の唐と、朝鮮半島の新羅が手を組み、
朝鮮半島の統一を目指しています。
高句麗、加耶、百済などの朝鮮半島国家を排除しての、唐・新羅連合軍による統一。
白村江の戦いにおいて、百済・日本の連合軍は唐・新羅の連合軍に敗れ、
朝鮮半島はこれにて新羅による統一国家となります。
そのような背景を想像して、百済や加耶から大量に、日本に帰化した人たちがいると
その中には、文化人、知識人、職人などの人々も含まれていることでしょう。
百済と連合した日本(大和政権)としては、それらの大量の帰化人の能力を導入する政策を取った、
そのように考えるのは、不自然ではありません。
陶磁器の製作にしても、朝鮮半島で長けていた技術者を多く、
大和政権の近くで従事させたでありましょうから、
陶邑窯という場所も、飛鳥地域からほど近くであることも、筋が通ります。

ここで配慮しなければならないのは、白村江の戦いにおいて敗北をした大和政権の
朝鮮半島と大陸との力学的関係です。
国際情勢としては、大陸の勢力がいつ日本に攻め込んできてもおかしくはないと、
当時の人々の肌感覚でもありましょう。
NHKの番組であったかは記憶にありませんが、日本海から本土を眺め、
当時、大和政権の中枢であった関西地方にどのように大陸側から攻め入るかと見ると
現在の京都府、舞鶴あたりから上陸をして最短距離にて大阪方面へと向かうことができます。
瀬戸内海を通過するよりも、日本海側から攻め込む方がより多くの兵士を船で運搬することができます。
その観点から大和政権が、飛鳥の地を政権の中枢においたのは地理的条件が整っていたからでしょう。
大阪湾からも奥にあり、舞鶴周辺からも距離があり、もし攻め入れられたとしても
背後の山地が包囲させられることを阻み、逃走経路も確保しやすい。

そのような国際情勢の中で、飛鳥地域を中心に見て、
当時の海岸線は今よりも内陸側であったことから海運もしやすかったであろう
現在の泉北ニュータウン周辺に陶邑窯が作られたというのは、
陶磁器製作は産業であると捉えると理解しやすい。

陶器は、それまでの土器とは何が違うのか。
焼成温度の違いによる、水漏れのしにくさ。
水漏れがしない容器ができたことで醸造技術が発達をし、
酒を作り保管することができるようになる。
その酒は、祭事にも使われることから、当時の支配者階級がそれらを提供することで
付加価値が、権威づけが行われていた。そのような歴史の流れを知ることができました。

このようなことを考えると、では猿投窯はなぜ、陶邑窯と入れ替わることができたのか。
遷都を繰り返していき、国際情勢の緊迫度の低下を表すように徐々に北上していく都から、
陶邑窯は距離的には離れて行きますが、猿投窯と比較すれば、
まだ距離的に近い場所での生産を行えています。
産業でありますから、商品経済の論理、資本主義経済の論理も適用されるでしょう。
資本の運動の効率に良い窯業地が、猿投窯になった。
それは技術革新でありましょうし、発注主の政治的状況の変化、地理的優位性の減衰。
そのようなことを考えながら、展示品を観察していくと、陶邑窯と猿投窯では何かが違ってきていた。
それは発注主の性質による物ではなかったかと。
陶邑窯の発注主は、律令を制定し仏教国家として日本を治めようとしている中央政権。
全国に仏教用具を配置する必要のある、国分寺・国分尼寺を建立させるような政権から発注されるものは、官制品の注文が多かったのではないか。その官制品の用途からして、昨日と同じ物を今日も作る価値観で技術の停滞を招いてしまったのではないか、と私は想像をします。

発注主の要望の変化に対応できなかったのか、
それとも、そもそもの発注主が変わってしまったのか。
その両方の割合でありましょう。

平安京政権においても、貴族階級に仏教の信仰が広がります。
しかしそれは、平城京政権とは別の仏教の信仰(システム)を求めていたであろうとは、
最澄や空海などの動向をなぞっていくと捉えられるかもしれません。
古代窯の移り変わりである猿投窯が、陶邑窯とその立ち位置を獲得したのは、
時の政権が、非陶邑窯の用品を求めた結果だったかもしれません。

一つのことから、芋づる式に色々疑問が出てくるのは、楽しいことです。
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