インサイト、結果は聴いてのお楽しみ。

インサイトのオーナーのご依頼で
運転席と助手席のスピーカーケーブル&スピーカーの交換です。

オーナーと二人掛りで、一日つぶれました。

ですがその手間をかけた甲斐は、ありました。

そして、200万円以下で、リッター30キロ（10・15モード）を出すためのメーカーさんの努力を
スピーカーケーブル&スピーカー交換からも、うかがい知ることができたのでした。




ドアの内張りをはがすと、そこにはHONDAさんの重量軽減とコスト削減、
そしてそれだけではなく、そのために失ったものを取り戻そうという努力の跡が見られます。

スピーカーのマグネットの軽さ。
スピーカーのコーンのサイズは17センチ級なのですが基部のマグネットの磁力は弱い。
外して、とりあえずと隣の鉄板にくっつけようとすると、くっつきません。
それほど弱い磁力しかないものを使っていました。
考えられるのは、スピーカーの重量の軽減。

そこは徹底していて、スピーカーを固定しているボルトも
天頂部分に一か所のみ。

その代わり、スピーカーを固定しているバッフルは軽くも厚みもあり
ボルトも1本ながら、バッフルはゴム糊（正確な品名を知りません）でしっかりと固定されているので
スピーカーの貧弱な性能を、ここでカバーしている。
さらには、通常メンテナンスホールは、大きく口があけられているものですが
インサイトの場合、薄い成形プラスチックで取り外し可能な蓋をされています。

一般的には、ここのメンテナンスホールを埋めることで、スピーカーから聴こえる音の周波数に
変化を与えようということをしているので、これはHONDAの音質管理なのでしょう。

スピーカー自体の性能は純正品がどうの、という意味ではなく
このマグネットの質では、高望できない、という素人の直観だったのですが
これを補うためのコストを、お安くも、手間をかけてやっている辺りが、HONDAらしさ、なのでしょう。

どこの市場で純正スピーカーの音が貧弱だと指摘されるかを考えると
米国市場をターゲットとしているのかもしれませんし、これをすることで
車外からのノイズを少しでも制御しようという狙いもあるかもしれません。
それだけドアの鉄板が薄いのか、とは、突っ込みません（笑）

軽量化の思想と、それだけではないことを付随させるあたりが、興味深い。

デッキの取り付けにもそれは散見されます。

インパネ外して、ねじ外せば、2DINデッキが外れるというのが
国産車の常識になっていますが
インサイトは、ボルト1本で止めるような工夫をしており、それが取り外しがしにくいように
防犯性の意味も含ませている辺り、米国市場の要請も少なくないのかなと考えるわけです。
作業性はかなり犠牲になるわけですけれど、何を選択しているかということの理由も
なんとなく想像ができるあたり、HONDA車に魅かれる人たちの気持ちもわかる気がします。

本題の、ケーブル&スピーカー交換ですが
スピーカーは、カロッツェリアの最廉価版。
ツイーターとウーファー部が一体になっている、コアキシャル型。
デッキは、サイバーナビ。音源は、HDDに録音されている圧縮音源。
このサイバーナビ、音の調整機能も多く、色々できそうなのですが
補正は出来るだけOFF、選択できるのもFLATを選択して、調整をしていきます。

取りつけただけでも、音が綺麗になって、ヴォーカルの定位もステアリングの下あたりまで
出ていたそうです。
そこから調整をしていくと、色々聞こえていなかった楽器の音が聞こえ始め
ヴォーカルの声がだんだん上にあがってきて
上から中央側へ移動していくのがわかったそうです。
2Wayスピーカーは、調整することが前提で使うようにできているのでしょう。

圧縮音源をリファレンスに使っていたのですが
綺麗な音がスピーカーから聞こえてきます。
今までイメージでもっていた、圧縮音源の悪い印象は、かなり消えました。
ただ、音源の録音状態が悪いものを圧縮録音すると、悪いところが目立つというか。

この状態で比較すると
純正スピーカーで聞いていた音はスピーカーに布団をかけていたような、くぐもった音でした。
この状態では聞きとりにくいし、音を大きくしても、聞き取りにくいまま音だけが大きくなります。
これは物理的な原因なので、良し悪しではありません。
多分、メーカーさんは、ちょっと低音が元気に聞こえるような段取りをしたかったと思いますし
現実、その通りになっていたと思います。

交換、調整をして、オーナーが納得したところで作業終了。

スピーカーから出てくる音は、音楽を長時間聞いていても、聴き疲れしない綺麗な音、になったと思います。
パジェロミニで出していた結果をもとに、狙っていたような結果を出すことができました。