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正義の変転 [雑感]

新自由主義経済とはなんぞや、ということを考えて発言している人がどれほどいるのか。

新しい首相の所信表明演説を聴きながら、なるほど彼らのいう反新自由主義というものは、昭和時代の高度経済成長期における日本の社会主義的な高福祉と資本主義経済の成長とを組み合わせた代物の再来を狙っているのだろうと。

巷では、社会の再生産と言っていますが、労働者の再生産が資本主義経済社会継続に必要なことであります。労働者の再生産というと、人権的に、人倫的に問題があるのかどうかは知りません。

独身者の私は、労働者の再生産に寄与していませんし、それを他人から指摘されれば事実でありますから「そうなんですよね」と認めるしかありません。




新自由主義経済のネックは、富の分配が社会で機能的に行われないことがあげられます。
お金を崇めることになると、必要のないお金を集めてもそれを社会が存続するために広く分配することを躊躇うのは人間のサガでありましょう。お金というものに対する信仰心であるかもしれません。その分配を、個々人と比較して広く長期的に行うことが国家機能にある。
具体的には、生活困窮者に対しての施策を、その日の生活をやり過ごすだけの分配をするのか、それとも資本主義経済社会下でありますから労働者として働き、自らの労働力を商品化することで賃金を得ることができるようにまで手を差し伸べるのか。無論、搾取される労働者は嫌だ、搾取される側になりたいと考えられるようにまででも結構です。それは、炊き出しや10万円をランダムに配るということでは叶えられることではないでしょう。

新自由主義の思想においては、この辺りをうまく「人権」や「寄付」行為などで誤魔化すことが得意でありますが、ですがそれでは社会を広く救うことにもなりませんし、格差拡大を陰ながら支援することにもなっているというところが、新自由主義経済の人倫を刺激する施策の本質であると私は観察しています。

そして今まで排除してきた人たちが今度は排除される側になるわけです。

今までは抵抗勢力を排除することが彼らの正義でありましたが、その正義はいつの間にか自らの手のひらからこぼれ落ちていたことになります。別段、新自由主義経済に反抗することが正義とは思えませんが、新しい物事の考えかただと自信を持って、自分たちが古いと言い放ってきたものに追い立てられることになると、それは抵抗勢力にならざるを得ないでしょう。そこに信念をとかく持ち出すよりも、自分たちが生活をしている基盤に何らかの影響が出るのではないかという予測、妄想の上で彼らは行動をする。それは、自分たちが排除してきた物事をとりあえず棚上げすることでもあります。

楽天の社長が、社会主義の再来だと述べたくなるのもそれは新自由主義経済のシステムで自分が成り上がってきた以上、そのシステムの変更が政治上及ぼされるかもしれないとわかれば、彼もまた「抵抗勢力」とならざるを得ないでありましょう。

この20数年の新自由主義経済の思想を取り入れた国家経済運営を是としてきた人たちにすれば、自らの権益を(それを彼らは既得権益だと言っていた)守るために行動せざるを得ません。財務省のわんことなったメディアなどは早速担当閣僚の重箱の隅を突き始めることでしょう。

さて新しい首相の唱える経済システムでありますが、少々過激でもあろうと市場は判断することでしょう。無論、その新しい(と言っているが半世紀前のリニューアル)システムで、儲けることができれば問題はないでしょう(いやこれでもダメか?)。新自由主義経済の止揚の役割もしたアベノミクスでありますが、これが左派インテリの人たちに言わせると「格差拡大の大元だ」などとトンチンカンな発言が見られます。日本経済の成長がこの30年とどめられているのは、アベノミクスの政策が原因ではなく、景気が向上しようとするたびに消費税率の増率によって日本国内の景気の腰を折り続けていることでありましょう。別に難しい経済指数のグラフと睨めっこせずとも公の情報を見ればわかります。アベノミクスは、小泉政権が本格的に導入をした新自由主義経済の倫理に基づく国家の財政、経済の運営に対してまずは制動を始めた。その一つが消費税率の増率の延期であったでしょう。左派インテリ(誰?)の主張する格差拡大の抑制をするには、財政規律のために国家の財政・経済運営をする、この手法に問題があることを自ら学ぶこともせずに、政治喧伝のために「アベノミクス」に反抗するゆえ、社会に対して効果がある経済政策を考えることができないでいる。反抗だけでは、社会に「お役に立つことができない」見本であります(毒)

国会質疑において、与党の政府に対する質問が実務的で実行力に富む内容であり、対する野党の政府に対する質問の大半は、新聞の見出しや週刊誌の見出しから引用を始めるメディア受けするような内容であり、それが政策に大きく拘らないものであるのは、与党と野党が入れ替わっても同じことであります。これは国会質疑をラジオなどで1日でも半日でも聞き続けていればわかることです。無論、文字起こしがされていますので過去の国会質疑、予算委員会の議事録を読めば、民主党が政権担当をしていたときの与党の質問の内容と、野党自民党の質問の方向性が、現在の与野党と入れ替わっているだけなのが理解できます。

総裁候補に上がった河野氏の経済政策が最左翼、岸田氏が最右翼。そして偶然にも、高市氏のアベノミクスが中間点となったのは興味深いと観察しました。

少々過激な(新自由主義経済思想を排除しようという姿勢を明確に政治上に出したという意味で)経済政策ではありますが、富の再分配のさきに見据えているであろう、労働力の再生産という資本主義経済社会においては最も注目すべき点においてどのようなアプローチになるのか。
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